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『僕らのままで』主演2名へのインタビュー全文/ジャック「環境というバンドエイドを少しずつはがすようにして、自分のことを発見していくんだ」

本記事では21年3月某日に実施された『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』主演2名へのインタビューの内容を全文公開。キャストに決まった際のきもちや、撮影の裏側について詳しく話してくれました。とてもなごやかなふたりの雰囲気を、ぜひ本編とあわせてお楽しみください。

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※出演者2名は以下の通り表記しています
ジャック・ディラン・グレイザー(JDG)フレイザー
ジョーダン・クリスティン・シモン(JKS)ケイトリン

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― (JKSへ) 今回が演技初挑戦です。どんな経緯だったのかと、決まった時のお気持ちをお聞かせください。

JKS: すごいクールだった。起用されたことを知ったのは、マクドナルドのドライブスルーでフィレオフィッシュを頼んでいた時だったの(笑)(注文を取っていた)若い女性店員に思わず大声で『テレビ出演が決まったの!!』って叫んじゃった。とにかくワクワクして、どのくらい大変な仕事が待っているかわかっていなかった。

でも撮影もすごく楽しかった。これが最初の機会で、最初の役だったのもすごくクールだと思う。その最初の作品が誰にとっても大きな事であるHBO作品だったということにも本当に感謝している。こんなに重要な役を演じられたことも。人間としても役者としても私を形作ってくれたし、この業界でもたくさんのクールな仕事を続けるきっかけにもなってくれた。

― 積極的に演技の機会を探していたりしたのですか? 

JKS: キャスティングのサイトで募集を見つけたのは母だったの。(演技の)仕事は探していたところだった。小さなものをイメージしていたから、HBOみたいな大作だとは思っていなくて、大学生のショートフィルムかなんかなのかなって思ってたの。まさか、ジャック・ディラン・グレイザーやキッド・カディやクロエ・セヴィニーのようなすごい人たちが出演するような作品だとは最初思っていなかったのよね。

― (JDGへ)今回初主演という快挙ですが、キャスティングが決定した時はどんな気持ちでしたか? 

JDG: 正直、自分が主演だとは思っていなかったんだけど…(主演が)僕なのか、ジョーダンなのか、クロエなのか…まあ、でもどんな気持ちだったかと言うと、クールだし最高。どの作品のどのキャラクターを演じる時とも同じようにね。参加できるだけでもすごく光栄だった。

でもフレイザーを演じるのは…役者としての自分の人生にとって(今までで)一番大きな挑戦だったし、一番頑張らなきゃいけなかったし、一番の経験でもあった。本当にたくさんのことを学んだよ。役者としての能力的にも成長できたと思うし、フレイザーはすごくリアルな人間で、とても共感することができたんだ。自分を含め、世界中で同じようなことを経験している人々に対しても共感することができた。とにかくたくさん学ぶことができたんだ。

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― (JKSへ)体と心のギャップに悩むケイトリンを演じるにあたって難しかったことなどありましたでしょうか?

JKS: 難しかったけど同時に難しくなかったかな。自分が個人的に過去に経験したことではなかったから。演技でも音楽でもなんでもやる時は、基本的に自分自身が経験したことやそれに近いことを参考にするようにしているんだけど、ケイトリンが経験するようなことや、そういう経験をしている人に多く会った事がなくて、そういう面では難しかった。(経験があったら)すぐに理解できるところが、そうではなかったから。

でも同時に難しくはなかった。それが助けになったから。ケイトリンが学んでいるのと同時進行で学ぶことができたから。同時に学び、同時に自分を知っていくような作業だったの。そういう面でそこまで難しくはなかった。ほろ苦くも最高でもある体験あった。

― (JDGへ)外見的な役作りについて、ブロンドはあなたのアイディアですか?また、フレイザーのファッション・センスとあなたの好みは一致しますか?

JDG:(ファッションの好みは)今はマッチしているよ。前はそんなにファッション好きじゃなくて、いつも同じズボンを履いているタイプだったんだよね。おしっこの匂いがしちゃうまでは同じパンツ履いてオッケーっていう哲学があって。でもそれは前の僕さ。今は毎日サンローランかセリーヌ…。ウソウソ(笑)。おしっこもウソだよ(笑)。

髪をブロンドにするのは僕のアイディアじゃなかったんだけど、すごくいいなって思った。ジャックとしては絶対やらないことだけど、だからやりたかった。自分とかけ離れていてるし、キャラクターにより深く入り込む助けになると思ったから。実際そうだった。フレイザーという役作りのパズルの重要なピースだったんだ。染めて良かったと思っているし、ネイルをしたことも、他にしたことも全部良かったと思っている。ネイルは僕がきっかけだったんだ。ルカに会った時にネイルをしていて、ルカがそれを大いに気に入ってくれた。

衣装は天才的な衣装デザイナーであるジュリア・ピエルサンティが考えたものだけど、衣装にとどまらず、すべてのことを手掛けてくれた。例えばミラノで髪を染めに行った時も、彼女がすべてを見てくれたしね。ジュリアは最高だったよ。衣装も最高で、役作りのためにも大きく役立った。

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― 監督の印象と演技の上でどんなアドバイスがありましたか?

JKS: ルカは本当に懐が深い人で、彼には新しいことを試そうというインスピレーションをたくさんもらった。脚本に書かれていることと少し違ってもあまり恐れないでいいとも感じさせてくれた。特に最初の頃は、シーンの途中で違うアプローチをやってみたら、って背中を押してくれた。私は上手く行かないんじゃないかとか、何故か(脚本通りにしないと)怒られるんじゃないかと思っていて、そうするのが怖くて、最初はそれができなくて。でも月が過ぎていく内に落ち着いてきて、よりオープンに、新しいことを試すことにもオープンになることができた。最終的には何だって試せるぐらいオープンになれたの。誰かを叩くのも、突然駆け出すのも、何にでもオープンになれていたし、そうあれることが本当に気持ちよかった。

JDG: ルカは言葉の使い方が本当にすばらしくて、あんなに自分の気持ちを言葉でうまく表現できる人に会ったことがないくらい。しかも英語が母国語じゃないのに。僕は英語を話すけど、ルカはイタリア人だからね。感情やフィーリングを言葉にすることが本当にうまくて、例えば自分のいた場所からどこへ移る時に感じる感覚だとか…そういうのを一行ぐらいの短いセンテンスで簡単に伝えてくれるだけですぐに理解できた。話し方や演出の仕方、仕事の仕方が斬新だった。緻密でもあって、また、ジョーダンが言ったように懐が深い。僕はいつか監督もしたいんだけど、そういう意味でも色々学んだよ。

最初イタリアに行った時、僕はルカに結構依存していて、映画を観たらルカがその映画を好きだったか聞いて、ルカが好きじゃない、って言うと僕も「うん、サイテーだよね!」とかって合わせてから、「…ええと、何で好きじゃないの?」って聞くと、理由を教えてくれて。そうするとなるほど!頭がいいなあってなって。いつも何に対してだって洞察力が深く、僕も意見をいっぱい聞いてしまった。それだけルカに興味をそそられていたから。そうやってすごく仲良くなったんだ。役者と監督としても、友達としても。

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― 本作のように米軍基地での日常を描いた作品は珍しいですが、ケイトリンとフレイザーの2人にとって、思春期を基地という特殊な環境で過ごすことはどんな影響があったと思いますか?

JKS: そんなに見たことがない、ユニークで、他とは違うっていうところは同感。ルカは敢えてそういう設定を選んだと思う。自分の置かれている環境というのは人を大いにインスパイアするものだし、人としての成長も助けてくれるものだと思う。基地での生活がどんなものかを、より細かく、じっくり描くことで、そういう場所で生活することの長所と短所を見せることができるし、それがどんな風にキャラクターに影響するのか、あるいはしないのか、も見せられる。

私はケイトリンのことしか話せないけど、彼女に関してはジェンダー・アイデンティティに関する自問や、周りの環境にフィットできるかということとも関連してくる。武闘派の父親に息子のように扱われていて、男性が支配的な(あるいは男性が多い)フィールドにいて欲しいと明らかに望まれている。彼氏がいたら、より女性性をもって行動したり、ふるまいたいと思うかもしれないところをね。最初は女性として在るから、そのことで社会が押し付けてくるものに対し、父親はより男性的なものを彼女に求めている。ケイトリンの物語にとって、基地が舞台であるということは大きなインパクトを生んでいるし、他の設定では(彼女の話をここまで)見せることは出来なかったんじゃないかと思う。

JDG: 僕もそう思う。この作品の設定はとても具体的だと思う。ジョーダンが言ったようにユニークだし、どのキャラクターも何かを抱えている。彼らが向き合おうとしている気持ちはとても具体的で、基地というのもとても具体的な設定だ。前にVICEか何かで軍基地で育つ子供たちの動画を見たことがあったんだけど、彼らは規則がいっぱいある環境で暮らしているからこそ、それに逆らって反逆心を持っていた。何かバブル(外とは隔たられた空間)の中にいるような感覚もあるんじゃないかな?

このキャラクターたちが置かれた環境は、彼の心情のメタファーだと思う。大人たちもまた、社会が自分に期待することに囚われてしまっているように感じている。このキャラクターたちは、自分たちが慣らされてしまった(環境の)バンドエイドを少しずつはがすようにして、自分のことを発見していく。だって、人はつまるところ、We Are Who We Are(原題/人は(他の何者でもない、)その人である)だからね。うん、何度だってこのタイトルを答に入れ込んでいくよ(笑)。

― フレイザーは「ラストタンゴ・イン・パリ」や「ブルー・ベルベット」のポスターを部屋に貼っていたり、クラウス・ノミの曲を聴いていたり。劇中に登場するポップカルチャーも印象的ですが、それらの作品を知っていましたか?個人的に好きな映画、ドラマ、音楽、ファッションなどについても教えてください。

JDG: ノミの存在は知っていたけど、そこまでハマったことはなかった。撮影していた時はフレイザー用にプレイリストを作っていたんだ。そこにクラウス・ノミやフランク・オーシャン、カニエとかフレイザーが聞いている音楽を入れていた。他にもいろいろ無名なのもね。あと、ジョン・アダムス。

作品にも出てくるけど、最初僕はアバノ・テルメという場所に泊まっていて、ひと月の間誰とも会わなかったんだ。撮影前のことで、みんながいるのを知ってはいたけど、一人で過ごしていた。ちょっとクールだった。そういうことをしたのは初めてだったんだ。いつもはキャストと一緒に過ごしたり、遊ぼうぜ!ってタイプで、今回も後半はそんな感じだったんだけど、最初はキャラクターをとにかく理解して、把握したくて、よくホテルの周りや町を一人で歩いて、フレイザーとしてコーヒーを注文し、座って、フレイザーとして人を眺めたりしていた。ちょうど通りかかった二人の女性が(ジョン・アダムスの)曲を聴いていて、その曲をシャザムしてゲットしたいと思ったんだ。それでプレイリストに入れた。

JKS: 私はあんまり知らなかった。ちょっと恥ずかしいんだけど、フレイザーの部屋のポスタ―の作品とかも観たこともなければ、聞いたこともなかった。でも私のキャラクターもあまり知らなかったからそれはそれでいいかなって思っていた。私が好きなのは古い映画とか。主に一人っ子だからなんだけど、子供向けのものをあまり観て育っていないの。いつも大人と一緒だったから、彼らが聞いたり観たりするものを見聞きしていた。

最近観たのは『いつか見た青い空』。すごくいい作品で、とても良かったし、みんなに薦めたい。ファッションに関しては、この作品にかなり影響を受けた。それまではわりとフェミニンなスタイルが多かったから。ある意味、そういう格好をしなきゃいけないんだと思っていた。社会がそう自分を見ているからそうしなきゃって。でも今はそう思わない。以前より着やすい服装をすることが多いし、よりマスキュリンなスタイルも楽しんでいる。マスキュリンさとフェミニンさを混ぜた感じかな。新しいスタイルもいろいろ試している。

JDG: 一番好きな映画は多分『グッドフェローズ』。他にも好きな作品はあるんだけど今出てこないや。でもいつも大好きな作品として挙げているのが『グッドフェローズ』で、バンドはドアーズかな。レッド・ツェッペリンも大好きで、今もツェッペリン好きな周期に入っている。オールマン・ブラザーズも大好きで、クラシック・ロックが一番好きな音楽のジャンル。でも他のジャンルも大好きだよ。ラップ、クラシック、ジャズ、ブルース…それに、ジョーダン、あれなんて言うんだっけ?(口でリズムを刻む)

JKS: テクノ?

JDG: そうそう、今はEDMも好き。あと、なんだろう?レディ・ガガも好きだし…それと好きなのは…あ、スケボーもするよ。

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― フレイザーとケイトリンの2人の関係は、言葉を多く交わさずとも思いが不思議と通じ合うような特別なコンビネーションがとても印象的です。実際のお二人の雰囲気や演じる上で何か印象的なエピソードはありますか?お互い共演した感想は?

JKS: ジャックが何て言うかすごく興味があるな。

JDG: 現場でお互いのことが好きだったかって? 大体はね(笑)。ウソウソウソ。その、言葉を使わずともお互いの気持ちをわかり合えるっていうところなんだけど、そうなんだよね。2人にはそれができる。同じ周波で物事を考えていて、視線を交わしただけで長い会話ができるっていうところがすごくいいなって思う。でも僕らにとっては、少なくとも僕にとっては一番の挑戦だったかもしれない。目だけでフィーリングや、それにも満たない感覚を伝えなきゃいけなかったから。全部すごく繊細な演技が必要だった。ルカがそういう繊細さを好んだからね。それが最もリアルな方向性だったとも思う。僕が彼女を見たり、彼女が僕を見たり、2人の間で気持ちの交換があって、お互い理解したり、何かを思い出したり、相手に返される。

でもここでチャレンジなのは、気持ちを感じているフリをするのでは足りなくて、実際に自分が何を考えているかわかっていなければいけないことなんだ。それは今まであまり慣れたやり方じゃなくて、演じているキャラクターの動機をちゃんと見極めなきゃいけないし、キャラクターの頭の中に入り込まなきゃいけなかった。今まではキャラクターの「声」を見つけてユーモラスに話せば良かったっていうか、コメディに持っていけばよかったっていうか。でも『僕らのままで』ではフレイザーが何を感じているか、しっかり理解しなきゃいけなかった。カメラで撮った時に、観客に信じてもらえるように彼の感情を感じなければいけなかったんだ。それは挑戦だったけど楽しかった。うん。

JKS: 私たちのキャラクターの関係はとても美しくて、とても特別なものだと思う。あまり見たことがないようなものな気もする。あってもリアルに感じられないような、この作品とはかなり違った描かれ方をしているんじゃないかな。ケイトリンとフレイザー関係は、すぐに起きて、すぐに変わっていくけど、少なくとも私にはフェイクだと感じられたことは一度もなかった。

それは脚本に書かれていたものが、私とジャックにとって本物でリアルなものとして演じられるものだったからというのもある。現場の私たちと近いものがあったの。ジャックがとにかく楽しい人なのはインタビューしていてわかると思うけれど、自分がセットでどんな感じだったのかはわからない(笑)。

でも2人ともすごく楽しんでいたと思う。セットでただ座っているなんかでも。最初は、正直に話すと、すごく緊張していて、ジャックとも他の人ともそんなに話せなかった。でもゆっくりと居心地がよくなっていって、ケイトリンとフレイザーを演じた今は、ジャックのことを良い友人だと呼べるうようになった。でも最初はなんか変な人だな、って思っていたの。ちょっとビビってたかな。(ジャックを見て)そうだよ、君のことだよ! 

JDG:  本当にジョーダンが僕らのバランスを取ってくれたって感じだよね。一番適切な表現をすると、僕がナットで彼女が頭脳って感じ。

JVS: …何?(笑) 

JDG: ええと、いま言葉を創っちゃった気がする(笑)

JVS: 頭脳はこの二人の関係となんの関係もないでしょ?(笑) 

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